図面より先に、一日の時間割を描く。
朝起きてから夜眠るまでの動きを、順に伺います。どこで着替えて、どこで新聞を読んで、誰が最初に玄関を出るか。ここで出てきた順番が、そのまま平面の並びになります。
イトナミ設計室
朝どこで目が覚めて、夜どこに座るか。
暮らしの順番が決まってから、はじめて線を引きます。
朝、光がどこから入るか。
それが決まってから、壁の位置を決めます。
決まった形をなぞれば、そこそこ住みやすい家は手に入ります。同じ間取りは、いくらでも建つ。
それでも足りないのは、あなたの一日に合った一軒です。だから、はじめに聞きます。朝、何時に起きますか。その時間、光はどこから入りますか。
十年後に古びるものを、住む人に押しつけたくないから。
見えなくなる場所ほど、あとから直せないから。
一日の話を聞き切るのに、それだけ時間がかかるから。
線が一本ずれるだけで、
暮らしは変わる。
朝起きてから夜眠るまでの動きを、順に伺います。どこで着替えて、どこで新聞を読んで、誰が最初に玄関を出るか。ここで出てきた順番が、そのまま平面の並びになります。
夏の西日と冬の朝日では、同じ窓がまったく別のものになります。方位と時間を先に確かめて、それから線を引きます。
建方の日。
ここから先は、隠れて見えなくなります。
着工から引き渡しまで、担当を替えません。話を聞いた人間と、現場で判断する人間が同じであること。それだけで、決めたことが薄まらずに建ちます。
線は、
暮らしの跡です。
設計を始めたころ、きれいな図面を描くことが仕事だと思っていました。いまは、話を聞き切ることのほうが長くかかります。
イトナミという名前は、営みと、糸並みから採りました。細い線の一本ずつが、誰かの一日です。並べると、家の形になります。
一日の話が、線になります。
並べると、家の形になります。